方便を究竟と為す その九

投稿日:2013年7月7日|カテゴリ:クリニックブログ, 方便を究竟と為す

(この文章は医師会雑誌に院長が連載している原稿を、医師会事務局の許可を得て一部手直しして当ブログに掲載することにしたものです。医学に関係すること、しないこと、勝手気ままに、しかし”まじめに”書いています。今後古い原稿もアップする予定ですのでご期待ください。)

 

いや、壮絶だったらしい。何がというと、去る5月11日に初めて日本で開催された、『オズフェス』というまったく彼女たちにとってアウエイの、ロックフェステイバルに参加した「ももクロ(注:ももいろクローバーZというアイドルグループのこと)」を応援する「モノノフ(注:ももクロのフアンの)」の応援がだ。(注:なんでアイドルの話が、と思われるでしょうが、院長はこのアイドルグループがその笑顔と歌声で世界を幸せにするだけでなく、人々を健康にもすると信じているので、話の中によく出てきますが・・・)現地からの報告では、「モノノフ」の皆があんまり必死に大声を張り上げるものだから、まるで地鳴りのような声援に会場全体が包まれていたらしい。チケットの売れ行きがよくないため運営から急遽オファーを受けての参加だ ったらしいが、彼女たちの参加が決まるとチケットは即日完売、一方でロックフアンの中のアイドル嫌いからは、「アイドルが参加するようなイベントにあらずというわけで、ブーイングの嵐の中での参加だったのだ。

当日「ももクロ」が出演する時間帯はパソコンの前でネットを見ながら、時々刻々と現地から入る情報を固唾を飲んで見守っていたが、「ももクロ」は大方の予想を裏切り、メタルな格好やペインテイングなどの特別な小細工をするでもなく、普段のきらびやかなアイドルのまんまのスタイルで登場。リーダー百田夏菜子の「今、目の前にいる私たちがアイドルだ!」の雄叫びからスタート。堂々と自分たちのパフォーマンスを行ったというからびっくりだ。ライブに先駆けて発信された名物マネージャー川上氏の「アイドルなめんな」「合わせる気なんかさらさらない」とのtwitterでのコメントを皮切りに、「モノノフ」のハートに一気に火がついて、冒頭に述べたような仕儀と相成った。みるみる膨れ上がるネットのコメントを読みながら、現地ばかりでなく、自宅や職場(?)で応援する人たちも含めた「モノノフ」の皆さんの熱い心がこちらにも伝わってきて、感動のあまり思わず目頭が熱くなった。

坂口安吾の『イノチガケ』だったか、桶狭間の戦いまでの信長を描いた小説があったが、まさしく「尾張の大たわけ」ならぬ「ももクロ城のたわけ姫」と「モノノフ」家臣団が、「今川の大軍団」ならぬアンチの待ち受けるロックの大牙城に討入ったかの感があった。「ロックな生き方」が正確に何をいうかはわからないが、旧態然としたものを破壊し、新たなるものを創造する心がロック魂だというなら、今回の「ももクロ」の参加はちっともおかしいものではなかった。メンバー、スタッフはむろんのことながら、「モノノフ」のイノチガケが伝わってきたからだ。

過去からのあらゆる条件付け(思考や感情の堆積物)を排して丸ごとのイノチを生きんとすることは、禅者やスーフィーの生き様でもある。禅者がよく「喝!」と叫びながら数珠を握った拳を突き出すのをドラマや漫画(例えばジョージ秋山さんの『ほらふきドンドン』)でみかけるが、喝というのはもともと大声を出すということであるらしい。だから「喝!」ではなく「ぜーっと!」でもいいわけだ。前回「Zポーズ」を話題にしたが、「Z」には「A」に戻る、無限に循環する(つまりは無限)という意味と、常に初心に戻ることを忘れないという意味をこめているらしい。そういえばステイーブン・ジョブスが愛読した『初心禅心』という本があったが・・・。結局何が言いたいかというと、「ももクロ」のメンバーや「モノノフ」が大声で「ぜーっと!!」といって指差しあうのは、禅者が「喝!」と言いながらあなたの顔に向けて拳を突き出し、「ほら、そこにおまえさんの本来の面目(不生不死、無限のイノチ)があるじゃないか」と言ってるのと同じなのだ。だから、ああ!、また自分はイノチガケどころかイノチヌケた状態で、いつの間にか自動操縦状態で患者さんと向かい合っているなあと思ったら、「ももクロ」のDVDでも見て、思いっきり彼らの「ぜーっと!」を浴びるといいのである。(DVDのない人は自分で自分の顔を指差してやるのも一興かも?)

そういう訳で(?)、今回の一枚は(注:この連載では院長自作の芸術作品?の写真を必ず載せていますので・・・)女性原理のエネルギーに敬意を表して、自作のチベット・タンカ(注:チベットの仏画)から「ヴァジュラ・ヴァーラーヒー(金剛猪女)」を。毘盧遮那仏(注:例えれば奈良の大仏)の化身ともいわれ、頭に乗っけている猪(イノシシ)は大地の豊穣のエネルギーをイメージしたものとのこと。ツルテイム・アリオーネ氏の『智慧の女たち』によれば、密教修行者がこの尊格を観想すると、その内なるエネルギーが活性化され、内外の対立が融解して宇宙と一体化するが、この宇宙こそ至上の歓喜、大楽、智慧なのだそうだ。それにしても、人、虎、ゾウの生皮をまとい、生首のネックレスをして、手には曲刀、骸骨の器、三叉鉾を持って乱舞するその姿は、かなりのカブキモノといえそう。「ももクロ」も次回のロックフェスに参加の機会あればこれを参考にして乗り込んではどうか。メタルやパンクのお歴々も目を点にして驚くだろうこと請け合いだ。

気合いが入ったので人の迷惑顧みずにまだつづく

安藤五徹