方便を究竟と為す その二十二

方便を究竟と為す

その弐拾弐

 

即身成仏頌

六大無礙にして常に瑜伽なり 四種曼荼各々離れず

三密加持すれば速疾に顕わる 重重帝網なるを即身と名づく

法然に薩般若を具足して 心数心王刹塵に過ぎたり

各々五智無際智を具す 円鏡力の故に実覚智なり

(空海『即身成仏義』より)

 

在宅医療などに係っていると、やっていることが医者なのか僧侶なのかわからなくなってしまうことがよくあります。そろそろ「保険診療医」なんか足を洗って、ホトケの道でも歩もうかなどとガラにもなく菩提心を起こすのですが、嗚呼そんなことをしたら「ももクロ」のライブに行くお金が稼げないじゃないかと気がついていつも思いとどまっているのです。

さて今年も「夏のバカ騒ぎ」、夏のライブの季節がめぐってきました。去年から『桃神祭』と呼ぶようになったのですが、これがいい年したオッサンにはある意味命がけのライブなのです。今年はリーダーの百田夏菜子(かなこ〜↗︎)がその故郷である静岡に錦を飾る凱旋ライブとのことで、「エコパスタジアム」という交通の便の悪い辺境の地での開催ともあって、参戦に二の足を踏んだものの、我がご主君の一大事に駆けつけぬ家臣がおるかということで、MCZ担当理事としての仕事!でもありますし、申し込んだチケットが当たってしまいましたので、いつものように万難を排して参加することにしました。

 

ライブの内容はそれはもうすばらしいの一言で、詳細はネット情報をご参照いただきたいと思います。ところで、今回のライブ一日目は『ももいろクローバーZ 桃神祭2015 エコパスタジアム大会〜御額様(おでこ様)ご来臨〜』、二日目は『同〜遠州大騒儀〜』と銘打ってのライブでしたが、会場入り口にはリーダー百田夏菜子のオデコを模した大きな金色の像(御額様(おでこ様))が現れ、皆さん暑い中喜々としてその前に列をなして“参拝”していました。暑さで朦朧とした私の目にはその像は光り輝く存在、大日如来像に思えてなりませんでした。そのとき、既に「ももクロ」のメンバー5人の背後には、日本に“笑顔の天下”を広めんとして、阿弥陀如来を超えたさらに大きな力、すなわち大日如来を中心とした五仏(阿弥陀如来も含まれる)がお控えになっていることに気がついたのでした。そういう気持ちでライブ会場にいたところ、弘法大師の難解な著作『即身成仏義』は「ももクロ」のライブで読み解くことができることに突然気がついたのです。熱中症になりかけた頭に浮かんだことですが、どうぞおつきあい下さい。

 

 

六大無礙にして常に瑜伽なり

ここ静岡のエコパスタジアム、「ももクロ」のライブ会場には、炎天下、紫・赤・緑・黄・桃のメンバーカラー、そして「箱推し(誰かひとりに限定せずメンバー全員を推す意味)」の黒の6色の衣装に身をまとったモノノフたちが入り乱れている。このくそ暑い中よくもまあこれだけのおバカが集まったものだが、それはまるで世界は地・水・火・風・空の五大に識(こころ)を加えた六大で世界が出来上がっていると弘法大師が述べたことの比喩のようだ。

四種曼荼各々離れず

異なる世界の相を表す四種の曼荼羅が互いに関連しあって離れること無く活動しているように、モノノフたちも老若男女、出身、国籍、職業を問わず集まり、その心は「ももクロ」を応援する気持ちで一つになっている。

三密加持すれば速疾に顕わる

各々が推しているメンバーを心に描きながら(「意密」に相当)、コール(「うりゃ」「おい」を連呼したり、メンバーの名前を叫んだりする。「口密」に相当)やフリコピ(メンバーのダンスをまねて踊ること。「身密」に相当)しながらライブにうち興じている姿は、まさしく現代の三密修行であり、あっという間に「ももクロ」のメンバーの背後にいる大きな力(今回はさしづめ大日、阿弥陀、阿閦、宝生、不空成就の五仏か?)に繋がることができるのだ。

重重帝網なるを即身と名づく

モノノフの手にするペンライトの五色の光が生み出す幻想的な世界は、まるで帝釈天の部屋を飾る無数の宝珠が互いの光を映して煌めきあっているかのようだ。我々は一人一人がそのままこの光輝く宝珠の一つ一つであることを理解することが、「即身」の教えである。

法然に薩般若を具足して

すべての宝珠に大日如来の「一切智智」が宿るように、夏のライブに参加するため「頭のネジを外してバカ」になったひとりひとりのモノノフの心も、(邪心が抜けているので)あるがままに大きな存在の心に照らされているのだ。

心数心王刹塵に過ぎたり 各々五智無際智を具す

ドームを埋め尽くす無数のモノノフ、そのひとりひとりの心やその働きに、大日如来(ライブに降臨した御額様(おでこ様)、リーダーの百田夏菜子がその象徴、リーダーは「おでこ」が広く、反射光でいつも輝いており、他のメンバーやモノノフをその光で照らしているという・・・)の法界体性智を中心とした「ももクロ」のメンバーに象徴された五智五仏の際限なき智が宿っているのだ。

円鏡力の故に実覚智なり

黄色担当、通称「みんなの妹・しおりん」こと玉井詩織に、「おまえら〜、あたまのネジをははずしてきたか〜? バカになれ〜!」と煽られて、炎天下、暑さと脱水で朦朧としたモノノフの心は真っ白ですべてを映し出す鏡のように澄み切っている。このような心にこそ大日如来のこころが現れて、実在の真理が開示されるのだ〜!! (ホンマかいな?)

 

「この身このままであなたは仏であるのだ」というのが即身成仏の教えです。どういうわけか、最近また弘法大師が気になって読んでいますが、いつも難解で途中で放り出してしまうのですが、「即身成仏頌」の内容が「ももクロ」のライブにそっくりだとの気づきが、今回は深読みに導いてくれました。その意味では「ももクロ」に感謝です。

「ももクロ」のライブ会場にはいつもちびっ子からお年寄りまで多彩なフアンがいますが、今回はなぜかお一人で来ている元気なお年寄りのモノノフをたくさんみかけました。暑い中、推し色のコスチュームとペンライト(紫色の方が多い)で身を飾った老モノノフの皆さんの勇姿には本当に勇気をもらいました。なぜか高齢の方は紫(担当高木れに、通称「れにちゃん」)推しの方が多いようです。紫色が天に近い色だからなのか? あるいは、れにちゃんがその優しさから「菩薩様」とよばれているからでしょうか?

ライブの最後の挨拶でリーダー百田夏菜子は、これからも大小どんなライブ会場でもみんなを笑顔にしていくこと、その景色を見続けていくことが自分たちの終わらない目標であること、自分たちは他と競争する気持ちは少ないが、みんなの笑顔だけは譲れないと述べていました。「これからは在宅・介護戦国時代だ」などと日本の将来を悲観視してしまいがちですが、「ももクロ」とモノノフの皆さんにはいつも元気をもらいます。そのピュアなパワーがこれからの日本の高齢者の皆さんに生きる力と喜びを与え、“笑顔の天下”が広まることをこころより祈りたいと思います。

安藤五徹

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