方便を究竟と為す その弐拾五

方便を究竟と為す

その弐拾五

(この文章は茂原市長生郡医師会報 平成28年8月号に投稿されたものです)

 

—人間はすべてその姿のままで宇宙にみち、無邪気に輝いているものなのだ。<<太陽の塔>>が両手をひろげて、無邪気に突っ立っている姿は、その象徴のつもりである

岡本太郎

 

永遠だったはずの 未来でさえも

コワレモノと知って

人は戦士に 生まれ変わる

まずは胸に咲いた 小さな夢を

守るんだね

闇に 潰されないように

守れるかな?

迷うことも任務さTEAM 『Z』

(ももいろクローバーZ 「『Z』の誓い」より。 以下太字の部分は、いずれも同曲歌詞からの抜粋)

この歌は、アニメ映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」』の主題歌として作られたものですが、まるで在宅医療や介護に働く者たちのための“応援歌”なのではないかという気がします。聴くたびに勇気をもらいますが、何度も聴いているうちに、とりとめもなく頭に浮かんできたことがありましたのでまとめてみました。

我々の社会の在宅医療・介護(以下ザイタク)の需要は、団塊の世代が75歳以上となる平成37年(2025年)に向けて急増し、平成47年(2035年)頃そのピークを迎えると予想されています。ピーク時には当地区で今の1.6倍、千葉や東葛地区では約2倍に膨れ上がることも云われています。今“何とかやれている”としても未来に希望はあるのかどうか、誰もわからないというのが実情です。

まさしく永遠だったはずの未来コワレモノの可能性があります。そのことを知った今、だからわれわれは戦士に生まれ変わるのだと云うのです。

かつて人類が“進歩と調和”の道を永遠に進んでいくと、他愛もなく信じられていた時代がありました。“大阪万国博覧会”の時代です。ところが、イノチのない科学工業力のみの“進歩”や、管理化された社会が示すようなイノチが通わぬ “調和”に対して、強烈な“ノン(フランス語の「ノー」)”を突きつけたのが岡本太郎です。

「人生・即・迷宮」と語る岡本太郎にとって、世界はコワレモノであることが当たり前で、常に「矛盾・対立」に満ちているものでした。そのことを踏まえた上で彼が求めたものは、「激しい対立の上に火花を散らし」「矛盾を内にはらみながら、それを跳躍台として飛躍してゆくダイナミックな進歩であり、調和」なのでした。

彼は、近代的な建造物がひしめく万博会場に、巨大な古代の“埴輪のお化け”のような“ベラボウ”なものを作ってしまいます。万博のテーマとは真逆のものを、しかも多額の国費を使って! それこそが、“太陽の塔”でした。

“太陽の塔”の意味については諸説あるようですが、最近では岡本太郎はミルチャ・エリアーデのシャーアニズム関連の著作を熱心に読んでいたことがわかっており、“太陽の塔”をシャーマニズムの視点からとらえる研究もあります。それによれば “太陽の塔”はシャーマンが天上、地上、地下の三界を自由に行き交うための宇宙の中心軸、「生命の樹」であり、その複製としての「シャーマンの木」であること。そして「天空上昇したシャーマンが「天空神」ないし「太陽神」と一体となった様子を大阪万博のテーマ・パビリオンとして制作し、<<太陽の塔>>と命名したと理解されるのである」というのです。つまり“太陽の塔”は大阪万博に降臨した“太陽神”だったのです。

“太陽の塔”は、万博記念公園で永久保存されることになりました。他の建造物がすべて移転や撤去されてしまった中で、この塔だけが時の試練に耐えて当時のまま天に向かって屹立しているように、その姿は今でもそれを見た人々の中に生き続けています。そして我々がその姿を思い浮かべるたびに、岡本太郎が“太陽の塔”を通して将来の日本に託した、“イノチのエネルギー”あるいは“生きる力”を、無意識のうちに受け取っているに違いないと思います。

 

 

なぜ諦めてたんだろ?

何もできるわけがないと

信じ込んでいたよ 絶望のプロパガンダ

 

身近の者から聞いたのですが、かつては自分の子供たちがうれしそうに未来の夢を語っていたのに、最近では将来どういう職につきたいということすらも、あまり語らなくなったというのです。何もできるわけがないと云うのが、今の時代、子供から大人、高齢者に至まで、我々の全てを支配するムード、頭に染み付いた絶望のプロパガンダなのかもしれません。

すぐ目の前にザイタクの需要が“2倍、2倍”の明日が待っています。もし大人たちが諦めているなら、子供たちには希望はありません。真っ先に我々がやるべきことは、この頭の中にいつの間にか染み付いて、我々の行動のエネルギーをブロックしている絶望のプロパガンダを、きれいサッパリと取り除くことでしょう。人の“ココロ”は自分の力で変えられるはずですし、逆にその人自身にしか変えることはできないからです。

では一人一人がココロを奮い立たせて戦士に生まれ変わることを、そして信じ込んでいる絶望のプロパガンダを抜き去るための戦いを、我々が応援する方法はあるのでしょうか。

 

 

始まりの歌が響く

『Z』の旗が翻る

さあ行こう 仲間たちが待ってる明日へ

 

黒沢明監督の映画「七人の侍」のワンシーンで、侍の一人である平八(千秋 実)が、農民との連合を示すを作りながら語ります。「戦の時にはな、何かこう高〜く翻るものがないと寂しい」と。

平八は野武士との本格的な戦いが始まる前に、一人の農民を守ろうとして真っ先に敵の銃弾に倒れてしまいます。しかし、彼の作ったは、その後雨の日も風の日も、まるで農民や仲間だった侍たちと苦楽をともにするかのごとく、農家の屋根の上でシンボリックに翻り続けるのです。

ことを決意した者たちにとって、旗は大きな意味を持つでしょう。そういえば、かつて日本の将来が危機にさらされ、この戦に負ければ後がないと云われた時に、波高き海で戦艦三笠に翻ったがありました。その名も“Z旗”です。うっかりしていれば我々にも後はなくなります。そのためには一人一人が奮励努力しなければなりません。我々もを掲げてはどうでしょうか。ザイタクで戦う戦士たちのための新しい“Z旗”です。

 

 

まずは胸に咲いた 小さな夢を

守るんだね それが・・・

『Z』という 誓い・・・

 

今の3Kの介護の現場を支えているのは、若い方たちを中心とした力です。その努力には頭が下がる思いがしますが、特別養護老人ホームでの回診時に彼らと話をすると、仕事は大変だし給料も十分とはいえないが、“やりがい”はあるといいます。あるいは「お年寄りが好きなので苦にならない」という人も結構います。そんな人はきっと、自分の祖父母との間に良い思い出を一杯持っている人なのでしょう。このような若い方たちの胸に咲いた小さな夢、あるいは希望の光を闇に潰されないように守らねばなりません。若者たちが活力を失えば、本当に未来に希望は無くなります。

“ももいろクローバーZ(略してMCZ)”のリーダー、百田夏菜子さん(かな⤵こ〜⤴)は世界を笑顔にしようとの大望(これを“笑顔の天下”とか“笑顔の天下統一”と呼んでいます)のもと、大忙しです。彼女はいつも笑顔で輝いて入るせいか、あるいはオデコが広くて反射光がまぶしい?ためでしょうか、フアンの間では「アマテラスオオミカミ」「大日如来」「太陽の化身」あるいは「太陽神」などと呼ばれています。“太陽の塔”は万博会場に降臨した“太陽神”でした。だから岡本太郎が“太陽の塔”でやったことを、生ける“太陽神”、百田夏菜子さんの存在とそのエネルギーでやれないかと思うのです。

ザイタクで汗をかいている若者たちと同世代である彼女が目指す “笑顔の天下”、それは必然的に、ザイタクの需要が2倍に膨れ上がっている超高齢化社会の世界で実現されなければならないことになります。だから“笑顔の天下”への道程には、ザイタクで働く今の若者たちの活力をいかに維持し増やしていくか、言い換えればその “笑顔”を増やしていくかと云う点で、我々と同じ課題を抱えていると云えます。

そこで、同じMCZのイニシャルを持つ者同士として、“ももクロ”と我々“茂原市長生郡のザイタクチーム”が一心同体の“姉妹チーム“として繋がることができればどうでしょうか。それを今をときめくトップ・アイドル一人である百田夏菜子さんから公認してもらえると面白いし、フアンでなくともエネルギーが湧いてくるのではないでしょうか。

さらに、同じ志をシンボライズしたを作って『Z』の旗と呼ぶことにします。(この『Z』の旗『Z』は、ザイタクの頭文字のイニシャルであるZと、ももいろクローバーZの両方にかけています)そして、かつて“太陽の塔”が万国博覧会という“祭典”の中に姿を現したごとく、そののもと実際にこの茂原市長生郡に“太陽神”その人に降臨してもらい、皆で“祭り”を開くのです。“祭り”は“祈り”の場でもあります。その場で“笑顔の天下”に向けた彼女の志、、希望と、ザイタクで働く若者たちのそれらを同じに込めるのです。

我々には岡本太郎が残してくれた“太陽の塔”のような、物理的に“ベラボウ”なものを作ることはできません。しかし、『Z』の旗を創り、その小さなレプリカを作って一人一人に手渡すことがならば十分できるでしょう。そのことによって、若い人たちのの中に、ザイタクで働く“希望”と“矜持”を示す旗が翻るようにしたいと思います。

この『Z』の旗はたとえ小さくとも、 ザイタクで働く多くの人々の熱意はもとより、“笑顔の天下統一”を目指す百田リーダーと“ももクロ”、 さらには、“モノノフ”と呼ばれる頭のネジがはずれた大家臣団?から発する巨大なエネルギーという “ベラボウ”なものも込められることにもなるのです。

そのを我々が手にし、 “笑顔の天下”を作らんとするエネルギーの力といっしょになって、自分もザイタクの未来を担ってがんばるぞ!という“誓い”をすることを『Z』の誓いと呼べないだろうか、そしてその“誓い”で結びついた仲間たち、形なき共同体を、TEAM 『Z』と呼べないだろうかと思うのです。

 

注)

1 『万国博に賭けたもの』 岡本太郎(「岡本太郎と太陽の塔」

小学館)

2 同上

3 『岡本太郎のシャーマニズム – ミルチャ・エリアーデの影響』

佐々木秀憲 (「岡本太郎のシャーマニズム」展 川崎市岡本太郎美術館)

4 何度も書きますが、“ももいろクローバーZ”と“茂原市長生郡(医

師会)のザイタク”はいずれもイニシャルが同じMCZです。

Momoiro Clover Z

Mobara-si Chousei-gun no Zaitaku

我々は”ももクロ”と”シンクロ”しているのです。

安藤五徹

 

追記)お約束の“吽字の秘密”はまた別に書かせていただきます。どうかアシカラズ。